ネットの存在が私たちを狂わせる―IT時代の狂気・妄想

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人間の妄想や狂気はマスメディアと深い関わりを持っている。例えば「テレビが自分の悪口を放送してている」といった妄想は、典型的な分裂病の症例である。さらに最近では、ネットの存在に強く影響を受けた狂気や妄想も登場してきているようだ。

「Dr 林のこころと脳の相談室」には、メールで寄せられた心を病んだ人々の質問に、精神科医の林氏が回答した内容が掲載されている。中でも興味深いのがネットに関係した症状。「ウェブカメラを通して私生活がネットに流出するのが不安」「皆と同じようにiPodを脳内に埋め込む手術を受けたい」といった相談が実際に寄せられている。
彼らの妄想を「電波のたわごと」一笑に付すのは簡単だ。しかし内容をよく見れば、私たちが常日頃抱いているネットに関する不安が、ほんの少し形を変えて現れたものだということにすぐに気付くだろう。私たちが感じている個人情報流出の恐怖や、ソフトの更新に乗り遅れまいとする焦燥は、彼らの狂気と同じ根元に繋がっているのだ。

■ ネット時代ならではの不安が狂気を呼び寄せる

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ウェブカメラを通じて私生活がネットに流出する不安に苛まれる相談者。ウェブカメラを勝手に起動させるウイルスは存在しないし、パソコンの電源を落としていれば問題ないのだが、相談者はウェブカメラのレンズをシールで塞いでいるという。妄想のきっかけとなったのは、デスクトップをキャプチャして流出させるウイルスの存在を知ったこと

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iPodで常に音楽を聴いていないと不安になるという症例。さらに脳内に埋め込むタイプのiPodが発売されていて、ほかの人々はそれを使っている、という妄想に悩まれている。iTunesの自動更新の通知を見逃したことで、「自分だけが最新のiPodを持っていない」という妄想が生み出された

Dr 林のこころと脳の相談室

2009年05月14日 20時48分
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